愛川晃央さん【理容 アイカワ】

愛川晃央さん【理容 アイカワ】

笑って話しながらも細やかに動き続けるハサミ。
流れるように動くその手元に、つい見入ってしまう。
父親が始めた理容アイカワを継いだのが、現在の店主、愛川晃央さんだ。

笑顔ではさみを握る姿はまさに天職という印象だが、
実は昔から理容師になりたかったわけではない。
高校卒業を控えたある日、父親から
「修行先を決めてきたから」と突然言われたという。
親や紹介してくれた人に恥をかかせるわけにはいかないと、
一年だけのつもりで始めた修行。
しかし、修行先は神奈川の有名店。
厳しい修行に、五人いた同期が一人、また一人と辞めていき、
残ったのは愛川さんただ一人だった。
一年のつもりだった修行は十年に。
毎日の修行で培った技術と経験を活かし、
ファッションも含めて似合う髪形を提案するうち、
たくさんのお客様から指名されるようになっていた。
引き止める声や独立を勧める声もあったが、
銚子に戻ってお店を継ぐ決心は揺らがなかったと言う。

現在のお客様は常連客ばかりだというアイカワだが、
新しいお客様を増やすより、
今通っているお客様を大切にしたいと言う。
お店を改装しないのも、
「昔から来てくれるお客様の居心地が悪くならないように」という配慮からだ。
しかし、そんなお店をお客様は見逃さない。
お客様は常連さんになっていき、
家族や知人に勧めてまた常連さんが増えていく。
まさに、地域に根ざしたブランドとなっているのだ。
インタビュー中もひっきりなしにかかってくる予約の電話が、
アイカワの魅力を一番良く物語っているだろう。

技術はもちろんだが、愛川さんと話したくて通うお客様も多いだろう。
多趣味で情報通の愛川さん。とにかく会話が楽しい。
趣味の一つであるロシアの武術システマなど、
初めて聞くことばかりで思わず聞き入ってしまう。

「楽しそうに仕事をしている」とうらやましがられることもあると言う愛川さん。
しかし、ただ待っていて運よく天職を手に入れたわけではない。
例え最初は思い描いていた理想の場所とは違っていても、
まずは置かれた場所で一所懸命に過ごした日々があったからこそ今がある。
その姿勢は、住んでいる街に対しても同じだ。
銚子を「好きな街にしたい」と言う。
他の街と比べて足りないものを探すより、今いる場所で楽しめるように行動してみる。
そんな愛川さんが語る銚子の街は、とても魅力的だ。

愛川さんが座右の銘としてあげた言葉は、「諦めが肝心」。
言葉の表面だけ受け取れば後ろ向きにも見えるが、実際は正反対だ。
今持っていないものを追い求めるのではなく、
持っているもの、今いる場所でいかに楽しめるか。
愛川さんはそれを軽やかにやってのけている。
楽しそうに働いていて、プライベートも楽しんでいて。
その姿は子供の頃思い描いていた「カッコいい大人」そのものだ。

インタビューを終えて帰ろうとした時、
初めて訪れたはずなのになぜか懐かしく感じた理由がようやくわかった。
自分でもすっかり忘れてしまっていた。
小さい頃、父が理容店に髪を切りに行くとき、よく一緒について行っていたことを。
子供でも笑顔でお店に入れてくれて、
まるで一人前になったように話しかけてもらえるうれしさ。
理容店の持つ懐の深さと居心地の良さを、
子供ながらに感じていたのかもしれない。

名前も言わず、ふらりとお客さんがやってくる。
そしてアイカワは、今日も誰かの「居場所」になる。

「銚子で見つけた幸せ」
シチュエーションごとに違った表情が楽しめる夕陽

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